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第103回

2006年12月。

クリスマスに向け、TOKIは地元の養護施設への子供達に向けてのプレゼントを模索していた。

「う〜んと…どこかからのプレゼントと重複しちゃマズいな…」

そんな思いで情報を探るべく養護施設のHPを覗いた。

すると超大手の運送会社の支店や、誰もが知っている大会社の支社などから贈られた物凄い数のプレゼントが紹介されており、その品目がHP上を埋め尽くすくらいに列記されていた。

TOKIは愕然とした。

自分がやろうとしていた事のスケールの小ささが気恥ずかしかった。

(俺がわざわざやらなくても、子供達を気に掛けてくれる人は大勢いるんだな…)

(世の中、捨てたもんじゃない)という喜びも感じたが、一抹の寂しさも覚えた。

TOKIのそんな優しさの居場所のなさを払拭するような出逢いを運命はすぐに用意した。


数日後。

「あ、社長ですか?あの〜今ちょっと変な人が来てるんですよ」

と社員からの電話。

「何?どうしたの?」
「いや、茶髪の人が2000円くらいで大量の物資を譲ってくれないか?って来てるんですよ」
「は?何それ?そっちで何とか対処できないの?」
「いや、「困ります」とは言ったんですけどね」
「う〜ん、わかった。まぁ、じゃあちょっと行くよ」

(危険な人物なのかもしれない)という懸念もあり、TOKIは車を急いで飛ばし、経営傘下の一つの店舗に向かった。

「私が代表ですが?」

現場に着き、対象の男性に詰め寄る。

見たところ危険な人物には見えない。

「あ、こんにちは。私、畑と申します。あの〜2000円くらいしか予算が無いんですが、これで何とか色々な物を譲って頂けないでしょうか?」
「え〜っと、ちょっと話の主旨が解りかねるんですが?」
「あ!す、すいません!申し遅れました!私、こういう所で働いている者です」

差し出された名刺を見る。

「(知的障害者施設 友愛学園…青梅にある施設か…)施設で働いてらっしゃる方なんですか?」
「ええ、そうです」
「どうしてまた?」
「いや、国の予算が削減されてしまって…子供達の物もそうなんですが、様々な物資に事欠いてまして…。私共としましてはクリスマスくらいなんとか例年通りに過ごさせてあげたい、という気持ちがあるんですが、予算上そういう訳にもいかないので、何とかお店さんの方に足を向けて直接お願いに上がってる次第なんです」

TOKIは友愛学園の窮状を事細かに聞いた。そして…

「事情は分かりました。私に任せておいて下さい。おーい、ちょっと!」

TOKIは社員、アルバイトの3名を呼びつけて、隣接した倉庫の鍵を開けさせ、その中に積み上げられたダンボールを自らも降ろし始めた。
衣類や、雑貨等々、TOKIはテキパキと指示を出し、品物を分別した。
うずくまった大人が入れそうな巨大なダンボールが次々に積み上げられていく。

「あ、あの〜」

畑氏がTOKIにストップをかける。

「どうかしましたか?」
「いや、あの〜先ほども申しましたけど2000円しか予算がないんです…」
「えぇ、知ってますよ」
「ちょっと、これだけの量になると…」
「あぁ、そんな事ですか。いや、お金は要りませんよ」
「え?」
「いや、だから、私からの寄付という事にさせて下さい」
「いや!でも、それじゃ…」
「私、元々地元の養護施設の方にも、こういった援助はさせて貰っているんですよ。そことは別に、またこういったご縁が持てて嬉しく思っています」
「いや、あの、いくらなんでも、これだけの量は…」
「…私、いつか貴方みたいに働きたいんです。今は会社とかの事情があって出来ないのですけどね。だから、今の私に出来得る限りの事はさせて下さい」

TOKIのこの言葉に畑氏は声を上げて涙した。


愛に逸れた子供達の為に生きる。

そんな二人の男の出会い。


この出会いが、後にSTEALTH「アルストロメリア」へと繋がっていく。


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