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第11回

受験日。

受験に向けての勉強もロクにしていないのに「自分が落ちる筈がない」と言わんばかりの自信。

次々とテスト用紙の空白を埋めていく。

それは答えがわかっているのではなく、わからない問題の回答は適当に記入しているだけ。

(まぁ、こんなモンだろう)

全ての行程が終わり、自宅に帰る。

今現在、企業は学歴よりも「実力主義」「結果主義」とされているが、当時は完璧なる学歴社会。

高校に行かない、行けないというのは、職人を目指す者か、よほど家庭が経済的に逼迫している者か、素行が悪すぎて、どうにもならない者以外、まずありえない事であった。

(そんな風に自分がなる訳がない)

その理由もあった。

自分の学力なら余裕で入れる高校を選んだからである。

そして合格発表の日。

自分の受験番号が見つからない。

(何かの間違いじゃないのか?)

自分より学力が劣るクラスメイトは受かっている。

どころか、同じ高校を受験したクラスメイトは全員合格。

自分のみ落ちている。

受験生は全員母校に帰り、担任教師を囲み、合格者は喜びを分かち合っている。

取り残された自分。

担任教師に精一杯の精神力を振り絞り、おどけた口調で

「先生、俺、落ちてたわ」

と明るく言うと、

「…何やってんだ、お前」

と、侮辱の視線で一蹴された。

「とにかく、家に帰れ」と言われたTOKIは、自宅に帰って親に報告する。

無言の母親。

やりきれない空気の中、TOKIは受け入れ難い現実にうちひしがれていた。

適当な事をやっていれば「それに見合った結果」が返ってくる。

15歳の春。

この4年後、マイクを持ってステージに上がる自分の事など、想像もできないTOKIがそこにいた。

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