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第12回
受験に失敗した者がこぞって集まり、必然的に競争率が高くなる2次試験も落ち、定時制か通信制という選択肢しかなくなった。
いずれにしても、朝早く起きて、学生服を着込み通学する、という、いわゆる「普通」の高校生活が出来るという選択肢は自分には無い。
悲観に暮れる母の顔を見て、TOKIは背水の覚悟で定時制の2次試験に臨んだ。
定時制と云うのは夕方5時半からの登校。
終わるのは夜9時。
当時の定時制高校と言うのは、かなり荒れたイメージがあり、問題児の吹き溜まりであるという認識だった。
だが選択肢は無い。TOKIは全力で試験に臨んだ。
その甲斐あって無事合格。
入学後、担任教師曰く、トップの学力だったという。
この高校は私服、バイク通学、アルバイト全てOK。
頭髪規則も無し。
元来、働きながら通える事をスローガンに掲げた学校制度なので、当たり前と言えば当たり前だが、中学校の延長線上のように制服を着た学校生活をイメージしていた者にとっては、かなり面食らう校則だった。
「どんなヤツ等がいるんだろう」とTOKIは入学式に向かった。
会場には下を向きオドオドしている普通の出で立ちの者もいるにはいたが、眉毛を剃り落としている者、パンチパーマのチョビ髭、茶髪でガムを噛んでいる者、辺り構わず睨みつけている者。
女子は女子で身体的に障害を持つ者から髪を染め上げて何事も我関せず的な態度でいる者まで。
どんなに大人ぶっても、しょせんは制服に身を包み、頭髪規則の範疇内で自己を表現していた中学時代の連中とはワケが違う。
この場にいる全員が、わずか数週間前まで自分と同じ中学生だったなんて事は到底信じられない、という思いと同時に「これは退屈しなさそうだ」と含み笑いを零しながらTOKIは入学式に参加した。
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