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第17回
燦々と照りつける身を焦がす太陽。
熱く焼ける砂浜。
青と灰色が混じった色の海。
泳ぎが苦手だったTOKIは海に来た記憶は幼少時くらいのものだったので、かなり新鮮な心境で海を見渡した。
砂浜には自分達と同じくらいの年頃の連中も珍しくない。
「さ!泳ごうぜ!」
勇んで海に飛び込んでいく菊池と長谷川。
ボートを借りて来て海辺に向かう女子三人。
TOKIは彼らの保護者のように砂浜で彼らを見守っていた。
海辺に浮かぶボートに目をやりながら(静香ちゃんが、俺の事を…)今もっともTOKIの胸中を騒がせている事。
恋愛なんてした事がない。
中学時代に、ある女の子を見ると胸が苦しくなるという感情、つまり初恋である。
その感情は覚えていたが、それは小学生、保育園でも同じような感情を持った事に覚えがある。中学の時の感情は、それに毛が生えたようなモノだった。
今までの「男の子が女の子を」というモノとは違い「男が女を」という初めての感情だったかもしれない。
静香は母親を早くに亡くして父と二人暮らし。
それ以外の情報も友人以上の感情のやり取りもした事はない。
それなのに何故、自分の事を?
出口のない自問自答を頭で反芻しながら海辺に立ちつくすTOKI。
頭の中のモヤを振り払うように足元に転がる菊池が持参したビーチボールを手にTOKIも海に飛び込んだ。
肌に絡みつく海藻、塩辛い海水。
プールでは多少泳げるTOKIも潮流のある海では全くと言って良いほど前に進まない。
しかし、それでもみんながいる場所まで頑張って進んだ。
が、しかし潮流に流され、なかなかみんなの所まで辿り着かない。
顔を沈めて視界を捨てる事によって、推進力を高める泳ぎに徹した。
これが仇となり、みんなの姿を見失ってしまう。
戸惑う隙を海は見逃さなかった。
浮力を稼いでくれていたボールがTOKIの手をスリ抜ける。
急に重く感じる自身の体。
沈む、沈む。
急遽、丘に方向転換。
全力で泳ぐ。
しかし、断片的な視界でも丘が遠くなっていくのがわかる。
潮流に引き込まれている。
「このままでは…」
TOKIの心は生まれて初めて死の恐怖を具体的に感じた。
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