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第19回

「おい!大丈夫か!」

自分を見つけた菊池が近づく。

菊池と長谷川に肩を貸してもらい、海を出る。

鉛のように思い体。

砂浜に足をかけた瞬間、TOKIはガックリと膝から崩れ落ちた。

「救急車呼ぶか?」

それほどに酸素欠乏の為、顔が紫色だったのか、つい先ほどまで死の恐怖と闘ってきて憔悴しきっていた事が顔に出ていたのかはわからないが、菊池の焦り方から見て多分ひどい顔だったのだろう。

「いや。大丈夫だ」
「とにかく、そこの休憩所で横になってろ。運ぶぞ」
「一人で歩ける」
「バカ野郎!とにかく言う事を聞け!」

再び肩にTOKIをしょい込む菊池。

海の家と呼ばれる簡易休憩所でTOKIは横になる。

「お前はもう寝てろ、いいか?」
「あぁ、もうコリゴリだ。俺の事は良いから、お前も溺れてこい」
「ハハ、そんな口が聞けるなら大丈夫だな」

そんなやり取りを見守る女子三人。

「じゃ、静香が看てあげてなよ?」

唐突に睦美が切り出す。

「うん!」

と頷く静香。

静香とTOKIを残し、全員が再び海に出る。

「大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だよ」
「泳げなかったんだね。ゴメンね。気を使えなくって」
「いや、逆に心配かけちゃってごめん。いいよ、俺の事は放っておいて。静香ちゃんも海に行ってきなよ」
「私はいいの。傍にいたいから」

(え?傍にいたいの?俺のか?)

静香の、その一言で妙に意識をしてしまうTOKI。

互いが言葉を発しないまま、もどかしくも歯痒い時間が黙々と流れていた。

数時間後、沈黙を打ち消すようにバタバタと足音が近づいてきた。

「おい!そろそろ旅館に戻ろうぜ?メシの時間か迫ってきてるからよ」

泳ぎから帰ってきた菊池が言う。

TOKIの身体もすっかり回復し、全員荷物をまとめて旅館に向かう。

歩き出すTOKIに菊池が耳打ちをする。

(なぁ、静香とは何を喋ったんだ?)
(え?いや、何も)
(カァ〜、お前は何をやってんだ)
(何にも話しようがないだろ)
(まぁいい、今夜お前に話す事がある)
(…わかった)

話題の見当は、さすがのTOKIも予想が出来た。

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