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第27回
「人生初の恋人」という初々しさも影を潜め、TOKIと静香は互いの気持ちを口に出さずとも、やり取りが出来るまでになっていた。
ただ、初々しさに心を奪われている時は思いもしなかった事がTOKIの脳裏を過る事となった。
「他の男との情事」…想像するだけで気が狂いそうだった。
女性経験の無かったTOKIは何度も何度も自分に言い聞かせた。
「静香だって井浦と別れる事なんか想像もしていなかったんだ。二人は好きあって恋人同士になった。そして「そういう関係」になった。何を責める事がある?」
二人がそうなった事に、当の二人も、自分自身も、そして、その他の誰も責める事なんて出来やしない。
頭では分かっている。
分かっているけれど
「俺は静香しかいない。でも静香は沢山いた。俺が一番新しいというだけ…」
という、幼い嫉妬とでも言おうか。
そんな感情がTOKIの体内で渦巻いていた。
TOKIは二人でTVを見て、何でもない会話をしていたのに不意にTVに映った性的なシーンを見た途端、急に不機嫌になる、と言ったような、情緒不安定な日々が1年以上続いた。
静香自身もTOKIが考えている事はわかっていた。
原因は自分自身の過去。
母を亡くし、父は出張で不在がち。
「寂しさを埋めて欲しい」静香の過去の恋愛遍歴は、ただそれだけの理由だったのだろう。
しかし、静香の家庭状況を知らない他人から見ればある意味「恋多き女」とも取られても仕方がない。
TOKIは元々優しかった。
その心を波立たせているのは自分の過去。
互いが互いに心に秘めたものを隠しながら「2人が18歳になったら結婚しよう」という約束もしていた。
交際を初めてから2年の月日が経とうとしていた。
TOKI、17歳。
しかし約束の18歳になった時に静香は隣にいない事を、この時まだ知る由もなかった。
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