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第3回
「お菓子は大きい方が良いな。イッパイ食べれるから」
大きい袋のお菓子は80円。
ただ、拡散している硬貨を見れば見るほど10円玉の少なさに気が付く。
ほとんどが1円玉と5円玉。
それで80円分となると数えるだけで一手間かかる。
10円硬貨は後ろめたい気持ちを少しでも緩和する為、目線から外した。
1円が10枚で10円。
1円が5枚と5円が1枚で10円、と8個の硬貨の山を作るまでに5分以上は要した。
万が一、足らないと気まずいので何回も何回も数えなおして確認。
「よし、大丈夫!」
最早「泣いている」という言葉では括れないほど号泣している弟を必死になだめて、すぐ帰るから泣かないで待ってるんだよ、と言い残し、TOKIは家を出た。
幸いお菓子を販売している店は家から僅か10数メートルの所に所在している。
早速、店に入り品定めをするTOKI。
「う〜んと、じゃ、これ下さい!」
と無言で立っている店主に向かって大きい袋菓子を指差した。
店主が袋菓子を手に取って、空いた方の手で代金を受け取る仕草をした。
TOKIのパンパンに膨らんだポケットから何回も数えた80円を零さないように男に渡す。
すると
「なんだコレは!」
と眉間にシワを寄せ、語気を荒くする店主。
予期していなかった事態にTOKIは恐怖で氷結して言葉が返せなかった。
「ウチは「5円屋」じゃないんだよ!こんな金じゃ売れないよ!さっさと帰りなさい!」
と一喝し、TOKIの背中を突いて店の外に追い出した。
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