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第30回
TOKIは夜の世界に身を投じた。
今までの仕事をは辞めて、うらぶれた街のバーで働く事にした。
夕方からの学校、終わってから明け方まで仕事。
静香との一件があって以来、TOKIは無口になった。
自分を今までとは全く違う環境に置きたかった。
水商売の女、ヤクザ、ホスト等が入り乱れ、乱闘騒ぎは日常茶飯事。
テーブルの下でドラッグが飛び交う。
そんな荒んだ毎日。
でも、そこには人間の本性が垣間見えるような気がして居心地が良かった。
どんなに暑くても涼しげにスーツを着て、上品にハンカチで汗を拭うような人間よりも、暑ければ半袖のシャツを着て、流れる汗は吸水性に富むハンドタオルで拭うような本性に近いライフスタイルをTOKIは好むようになった。
「他人の目なんか気にしない」そういう姿に「人間の自信」と云うモノを捉えていたのかもしれない。
夕方からの学校、夜から明け方までの仕事。
帰って寝て、起きるのは正午くらい。
TOKIは昼からの時間を活用して自動車の免許を取得しようと教習所に行く事にした。
ただ、問題が一つ。
TOKIは以前取得した二輪車での免許が暴走行為が元で取り消しになっていて、取り消し処分から1年は免許が取得できない状況下にあった。
だが、その間でも通える教習所を探し当て、何とか通える事となった。
眠る暇もない毎日。
でも、それが良かった。
身体が動いていれば辛い事を忘れられるからだ。
そんな忙しい毎日を過ごして数ヶ月。
無事に免許を取得した。
菊池に報告。
「免許、取れたぜ」
「おぉ!じゃ、女の子乗せて湘南にでも繰り出そうぜ!」
TOKIは父が最近買った新車を借りて、菊池が誘い出して来た女の子二人を乗せての四人で夜のドライブの計画を立てた。
季節は冬。
それが大惨事の幕開けとなる事は、この時、知る由もなかった。
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