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第32回

(ん?あれ?俺、何やってるんだろう?)

夢から醒めたように意識を立ち上げる。

目の前にはグニャリと曲がった車のハンドル。

その先にはフロントガラスが割れて、モノ凄い勢いで煙が立ち昇っている。

ワケがワカらない状態。

(ん?)腿に重みを感じる。

視線を下に移す。

血塗れで目を瞑っている菊池。

即時、我に返った。

「う、うあぁぁ!」

事故!事故か!

「おい!おい!菊池!目を開けろ!おい!」

ハッとして、後ろに乗っていた女の子の事を思い出す。

振り返る!血塗れで意識を失っている二人。

「おい!おい!しっかりしろ!」

自分以外の三人全員気を失っている。

不意に何かが垂れてきて視界が塞がる。

目を擦る。手にベッタリと付着する血。

自分も流血しているようだ。

「う、う〜ん」

菊池が反応する。

「おい!大丈夫か!」
「あ、あぁ…」

視界を前方に移す。

ドンドン勢いを増す煙。

(爆発)最も危険な事態が予測された。

「今、助けるからジッとしてろ!」

TOKIは車外に出て外から三人を救出しようと運転席のドアを開けようとした。

が、車が変形してしまっているせいなのかドアが開かない!

反射的に割れた窓ガラスを更に拳で割り、何とか車外に出た。

幸い運転席以外のドアは難なく開ける事が出来て、一人ずつ抱き抱えて順番に三人を車外に出す事に成功した。

どこからとも聞こえてくるサイレンの音。

近隣の人が通報したのであろう。

三人を横たえて、あらためて車を見るとコンクリート製の太い中央分離帯に激突している。

分離帯がエンジンを突き破り、ワイパーの所まで食い込んでいる。

三人の身体が冷えないように自分の服を脱いで三人に掛ける。

幸い全員意識は取り戻したようだ。

救急車到着。

「大丈夫か!」

と、声を掛けると同時に慣れた動作で次々と三人の状態を診断している。

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