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第34回
一通りの検査を終え、包帯を巻かれたTOKIは廊下の待合室の椅子に腰を下ろした。
ここで、とある事に気が付く。
金。この病院での自分の治療代の事である。
ポケットの自分の財布を取り出し、中身を見た。
千円札が3枚と、小銭が少々。
この頃はコンビニで24時間入出金出来るような時代ではない。
日帰りで帰る予定だった為、持ち合わせが少なく、とても足りる気がしなかった。
廊下に投げ出されている血塗れの大量の荷物。
アチコチに包帯を巻かれ、服も自分の血と菊池の血が大量に付着している。
特にジーンズの左腿はドス黒く変色した血液で染め上がっていると言っても良いくらい。
この状態でTOKIは
(事情を話せば金がない事は何とかなるだろう。それよりもこんな所で時間を喰ってる間に、あの三人にもしもの事があったら…)
TOKIは意を決したように血塗れのボストンバックを右肩、左肩に担ぎ、大型のオーディオを手に持って、
(住所とか名前は救急隊員も把握しているから、金の請求は後で来るだろう)
医師に見つかれば、これから自分がやろうとしている事は止められてしまう筈。
TOKIは人目を盗んで、病院を後にした。
…深夜4時30分。
見知らぬ街に血塗れの服を着て大量の荷物を抱えた状態。
自分が救急車で搬送された時に救急隊員から聞いた三人の搬送先「タテバ」という場所にある某診療センターに向かって宛てもなく歩きだした。
金が無いからタクシーには乗れない。
街の所々にある地図を探し、それを記憶し、それを辿った。
筆者が調べたところ、TOKIが搬送された病院から立場という所まで、およそ5km。
5kmと言えば歩ける距離ではある。
が、それは勿論、土地勘と通常の体力があっての事である。
方角の見当もつかない深夜の土地で、1時間ちょっと前に満身創痍になった状態で20kgは超えるであろう荷物を担いで読者の方々は歩が進むだろうか?
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