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第39回
「なぁ、お前の弟って鼓笛隊で太鼓かなんかやってたよな?」
と、家に遊びに来ていた同級生の輝彦がTOKIに問いかける。
「あぁ、それがどうした?」
「いや、俺、今度バンドやろうと思ってるんだよ。俺ヴォーカルで」
「ふ〜ん」
「でさ、ベースとドラムがいないんだよ」
「じゃ、本人に聞いてみればイイじゃねぇか?」
「聞いてみてもいい?」
「あぁ」
同級生の輝彦がTOKIの部屋で突然の意思表明。
(バンドか…何考えてんだ)
TOKIは仕事の事で頭を悩ませていた。
仕事の内容は問題無い。
ただ、将来の事を考えていた。
この会社の給与体系じゃ、自分はフェラーリに乗る事も、豪邸に住む事も無いだろう。
無論、分不相応な欲は無かった。
ただ子供を儲けて、小さいながらもマイホームを構えて、それなりの車に乗る、というような生活が意外にハードルが高い事を19歳になったばっかりのTOKIは知ってしまった。
(将来か…)
自分には学歴は無い。
コネも無い。
かといって、このまま、この仕事をしていれば、自分の可能性を自分で狭めているようで嫌だった。
(好きな仕事をして普通の生活をしていきたいだけなのにな)
「なぁ、お前、ヴォーカルやってみない?」
思いにふけるTOKIに向かって輝彦が言う。
「は?何言ってんだ、お前?」
「いや、前にさ、飲み屋のカラオケでお前歌ったじゃん?あの時さ、俺、他の客の反応を見てたんだよ。お前が歌った途端、客が全員お前の方を振り向いてたんだよ」
「気のせいだろ」
「いや、お前は適当に歌ってたんだろうけど、しばらく客はどよめいてたんだよ」
「ふ〜ん」
「な、ヴォーカルやってくれよ!お前がヴォーカルなら俺はベースになる。な?やってみようぜ?」
(ま、暇潰しにはなるか)
くらいの適当な感じで承諾した。
現在C4、そしてSTEALTH、kill=slaydと長きに渡ってシーンに通用しているヴォーカリストTOKIの誕生のキッカケは、こんなに些細なモノだった。
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