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第42回
10代がいよいよ終わりを告げる頃。
仕事の合間を縫って、かねてから輝彦と約束していたバンドを結成した。
メンバーとの顔合わせ。
TOKIと輝彦以外みんなガーゼシャツ、ボンテージパンツに身を包み、音楽で食っていく!という決意を表したような格好だった。
輝彦以外からのメンバーからのTOKIの評価も上々。
(オーラがある)フロントマンには欠かせない、努力では手に入らない天性のものがTOKIには宿っているとの事。
吉祥寺の練習スタジオで初リハーサル。
曲はSEX PISTOLSというイギリスのパンクバンドと、UP-BEATというバンドのカバー。
この時の事をTOKIは述懐する。
「あの時はとにかく他のメンバーにナメられないように、って事だけでしたね。自分はただ歌うだけだったから機材なんていうものは何一つ持ってなかったけど、みんな持ってく機材に凄く圧倒された事を覚えています。そんな連中に囲まれてるのに自分なんてスタジオの店員に「すいませ〜ん、マイクのエコーってどうやってかけるんですか?」なんて聞いちゃって、メンバー全員から大爆笑されました(笑)」
楽しくも真面目なスタジオ練習を数ヶ月に渡って繰り返し、とうとう初ライブが決まった。
会場は新宿にあるヘッドパワーというライブハウス。
ライブが決まり、以前より格段に熱を帯びる練習が、日常の仕事の事や、未来に対する不安を忘れさせてくれた。
そして、ライブ当日。
髪を銀色のメッシュで染め上げ、自分で鋲を無数に打ち込んだ革ジャンと革パンに身を包み、ライブ会場に向かった。
電車を乗り継ぎ、会場に着く。
「思ったよりも小さい所だな」そんな思いをよそに対バンのリハーサルを見学する。
(上手いな)練習してきたのは自分達だけではない。
そんな事は分かっていたが、それを目の当たりにすると、また感覚が違う。
TOKIは(でも、やるしかない。誰にも負けない)と意気込んだ。
全バンドがリハーサルを終え、楽屋に引っ込む。
ほどなくして、お客さんの入場が始まり、出演トップバッターの自分達のいよいよ本番!ステージに上がる。
客席に目を向けると、そこには想像していなかった風景があった。
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