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第47回
手術時間7時間。
体内の血液のほとんどが出血している状態。
「今夜がヤマです」
手術を終えた執刀医の浜辺がTOKIの母に告げた。
現在時刻21:00。
東京都立墨東病院の廊下にはTOKIの両親、駆けつけた菊池。
そして加害者の結城とその上司の神谷がいた。
「あの子が死んだら、アンタを殺してやる!」
TOKIの母が結城に向かって叫ぶ。
「あの子はね!車に撥ねられて死んだ犬や猫に自分の服を脱いで掛けてあげたり、路上で物乞いしてる人を見つけたら自分の貯金箱を割ってお金をあげたり…」
TOKIに対する思いが溢れ返って言葉にならない。
それを加害者に訴えてもTOKIが回復する訳でもない。
ただ(アナタは、そういう人間を殺しかけている)という事を訴えたかったのだろう。
取り乱す母親。
それを制止する父親、沈黙する菊池。
ただただ下を向く結城と神谷。
暗澹とした空気が廊下を支配した。
…無言の空間。
ただただ時間が過ぎていく。
深夜1:00、2:00、時間だけが過ぎていく。
「あの…」
結城がTOKIの両親に話し掛ける。
無視する両親。
「あの、もしアレだったら食事でも取りませんか?寿司なんかどうでしょう?」
…寿司。
結城は気を使って、高級な食事を提案したのだろうが、「寿」という、おめでたい意味の文字を冠した食事を無神経に提案した事で両親が激怒。
上司が必死に謝罪しながら結城を連れ出す。
自分の過失を認めてしまい、社会的な地位を損なう事を恐れてか、会ってから結城がまともに謝罪しない事への苛立が、ここで爆発した。
院内に立ち込める怒りと悲しみを見つめるように、廊下の窓の闇が次第に明るくなっていった。
…そして事故当日から1日、2日経ってもまだTOKIの意識は戻らなかった。
3日目。
TOKIの手を握る母親が僅かな反応を感じ取る。
TOKIは目覚めた。
母はTOKIの顔を覗き込んで「見える?わかる?」と小声で問いかける。
「身体を傷つけちゃってごめんね」
死の淵から生還してもなお、親から貰った身体に傷がついた事を謝るTOKIの優しさに母は泣き崩れた。
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