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第5回
TOKIの家は、あまり裕福とは言えない環境にあった。
家の壁は「砂壁」といった「ドン!」と叩けば砂が落ちるという程度の強度のもので作られており、そこここに穴があいており、冬は隙間風が入り、夏は虫が自由に出入りできる。
更に追い討ちをかけるように、雨漏りはする、床は抜けている、風呂も無い。
僅か4.5畳という狭い部屋で両親と兄弟4人が過ごし、祖母が6畳間という部屋割りで日々暮らしていた。
家の外では快活なTOKIも、気恥ずかしくて友達を家に呼んだりする事は出来なかったと述懐する。
その当時の父親は仕事が長続きせず、麻雀、競艇、パチンコとギャンブル尽くしだったが故に収入が不定期、母親は常に家計のやりくりに苦労していた。
徹夜の麻雀をして雀荘でそのまま寝ている父親をTOKIが仕事に間に合うように起こしに行った事は一度や二度ではない。
開帳賭博で大負けをして、母が子供達の将来の為に爪に灯を灯すように貯蓄していたヘソクリを無心していた事も一度や二度ではない。
だからと言ってTOKIは父親が嫌いという感情は無かった。
世の中の父親と言うものは「そういうもの」だと認識していたからだ。
世界中、どこの父親も「そういうものだ」と思っていた。
無条件に母が愛しかった。
いつも子供達の残した物で食事を済ませていた母。
子供服が買えなかったので、自分の服をばらしてTOKIに服を作ってくれた母。
流行のヒーロー玩具が買えなかったので、手作りでヒーロー玩具を作ってくれた母。
TOKIは母が大好きだった。
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