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第62回

21歳の夏。

治験段階の薬を投与が出来るメドが立つ。

TOKIは墨東病院から、その薬が使用出来る病院に転院した。

「死ぬかもしれない」
「長生き出来ないだろう」
「根治の見込みは無い」
etc.etc.

幾度と無く心を締め付けた言葉。

この頃には、もう死を恐れる心が麻痺していた。

ただ「全ての可能性に挑戦してから自分の命を締めたい」TOKIの心は冷静にそれを受け止めていた。

病院と保険会社が用意した何枚もの書類と同意書。

「この薬の投与によって万が一の事態が起きても、どんな事になっても、一切文句は言わない」

という約束が交わされた。

それを経て、転院してから数日後、いよいよ、その薬がTOKIの身体に投与された。

投与されて10分もしない内に体調がおかしくなった。

心臓が鼓動を打つ度にハンマーで殴られるような激しい頭痛、42度を超える高熱、せり出す眼球、シーツが擦れるだけで肌が焼けるように痛い。

形容し難いほどの激しい副作用がTOKIを襲う。

昼過ぎに投与されると夜まで副作用は治まらなかった。

担当医は言った。

「この薬を投与して、可能性としては3つのパターンがあります。一つ目は投与しても拒絶反応も効果も見られなパターン。もう一つは投与している期間だけ病状は改善されるが、投与を止めると元に戻ってしまうパターン。もう一つは投与後、病状が改善されているパターンです。もちろん最後に言ったパターンを目指しての治療となりますが、今のところ一つ目は既に回避されていますので良い経過を辿っていると言って良いでしょう」

可能性は3分の1。

既に一つはクリアしているから2分の1まで可能性は上がった。

「ただし、投与期間中にも関わらず病状が悪化した場合は、もう打つ手立てはありません」

墨東病院と違って、随分ハッキリした物言い。

だが今のTOKIには、その方がスッキリして良かった。いたわる言葉も、慰めの言葉も要らない。

今の自分に必要なのは「厳然たる事実」

それだけは詳細に知っておきたかった。

…初投与から2週間が経過した、とある日の午後。

TOKIは担当医から呼び出しを受ける。

(検査の結果が出たんだろう…)

TOKIは、これ以上無い祈りを込めて担当医の待つ部屋に向かった。

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