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第63回

(コンコン)
「あ、どうぞ」
「失礼します」
「え〜と、検査の結果なんですけど…」
「ハイ…」

息を呑んだ。

「う〜ん、ちょっと良くないですね。残念ながら」

覚悟はしていた。

もう、覚悟はしていた。

いや、祈ってはいたものの、正直どちらに転んでも自分の運命に悔いは無かった。

「先生、じゃ、俺はあとどのくらい生きられそうですか?」
「そうですねぇ〜、このままですと、あまり長くは…」
「わかりました」
「ま、もうちょっと治療の方は続けてみましょう」
「お願いします」

部屋をあとにするTOKI。

(あまり長くは…)

余命宣告。

頭の中を幾度も木霊する残酷な言葉。

しかし、TOKIは前向きだった。

(生きられる時を精一杯生きよう)

病室に戻り、TOKIはベッドの中で”残された時間で何をしようか?”という事に頭を巡らせた。

(とにかく無駄には生きたくない。精一杯、何かをやろう!何かを残そう!)

何かをやる→何をやる?→何が出来る?→何をしてきた?自問自答する。

TOKIは「やりたい事」を必死で模索した。

有象無象にやりたい事を挙げても、実現させる根拠など何も無い。

ましてや自分の身体は内臓を失っている為、元気になったとしても普通の人間の半分程の持久力しかない。

現実を踏まえて、可能な限り実現させられるもの。

それは何か?

TOKIは薬の副作用に耐えながらも毎晩毎晩、自分の命を使う場所を脳内で探していた。

(どれだけ考えても空虚なモノだけで何も思いつかない)

何も築き上げてこなかった自分の薄っぺらな人生に半ば呆れながら、TOKIの心は、ひたすらに迷走していた。見上げる病室の天井。

もう何年、病室の天井を見上げているのだろうか?

世間の人達も自分の友人も、お洒落をして、街に出て、一生懸命仕事をしたり、デートをしたり、ドライブしたり…いわゆる青春を謳歌しているのに、自分はボロ雑巾のように縫われた身体を引きずりながら、残り少ない命の使いどころさえ見つけられないでベッドに縛り付けられている。

そんな中でも相変わらず投与される新薬。

伴う激しい副作用。

迷走するTOKIの思い。

しかし、事故以来初めてTOKIにとって朗報が知らされる日が近づいていた。

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