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第67回
TOKIの退院翌日から母親と静江が通院に負担にならない程度の距離で行ける病院を虱潰しに探した。
その甲斐あってか、今にも潰れそうなほど廃れている小さな病院だったが、その薬を投与してくれるという医院を見つけた。
早速、その医院を担当医に知らせ、連絡を取り合ってもらう。
投与ペースは週に2回。
無論、投与以外の日でも基本的には自宅でも安静を指示されていた。
「私が助けてあげるから安心しなさい!」と冗談交じりに静江が言う。
「必ず、恩が返せるように頑張るから」
「恩?プッ、何言ってんのよ〜」
「笑う事は無いだろ〜」
TOKIも静江に合わせて笑った。
しかし、笑顔の下に途方も無いくらいの感謝をしていた。
転院前、静江は母親が仕事で来れない時、自分のバイトの合間を縫って、日用品の買い出しや、鬱々としていたTOKIの気が紛れるように沢山のバイクの本や漫画を買ってきてくれた。
TOKIは、これから3つの事を生き甲斐にして生きようと思っていた。
一つは自らの可能性の追求、もう一つは自分の存在の証明。
最後は彼女の幸せの為の礎になる、という事。
この3つの為に生きる。
可能性や存在の証明に対しては、ある程度の期間を設けて、残りの人生の全ては彼女の幸せの為に生きようと心に決めていた。
数日後、いよいよ通院での新薬の投与が始まる。
静江が付き添う。
投与前は自分で歩いて行けるが、投与後は歩行しているせいか薬の効きが早く、徒歩5分の距離にある自宅にさえ静江の肩を借りなければ満足に帰れなかった。
女の子に肩を借りて歩く。
男として情けなかった。
でも、身体が言う事を聞かない。
TOKIは情けなさを感謝の気持ちに変えて、何とか自分のプライドを維持した。
「静江ちゃんは、必ず幸せにする。必ず」
そんな日々を繰り返していく中、TOKIは静江に音楽をやろうと思っている事を伝えた。
「このまま何もしないで生きるのはゴメンだ。どっかの会社に勤めるんじゃなくて、俺がいなくなったら絶対に存続できない。そういうところに身を置きたいんだ」
「私も応援するよ!」
「音楽で自分の可能性を試させてくれ」
「わかった!」
静江の了解を得た。
早速、バンドのメンバーを探した。
かつて一緒にバンドをやっていた同級生の輝彦には自分の意志を伝えて賛同を貰っている。
なのでベースは決まっていた。
あとはギターとドラム。
輝彦と二人で自宅でバンド関係の本のメンバー募集の欄を読み漁り、メンバーを探した。
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