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第68回

雑誌のメンバー募集欄で見つけた音楽性の合いそうなギターとドラムと、幾度と無くセッションを重ねた。

しかし、テクニックの問題や、人間性の問題で、なかなかメンバーが決まらない。

そんな日々を繰り返していく中、何気なく立ち寄った楽器店に張り出してあったメンバー募集の張り紙を見ていると、表現したい音楽性に、かなり共通しているものを感じるギタリストの張り紙があった。

連絡先をメモして、早速、連絡を取ると、相手も一度音合わせをしてみたいとの事。

ドラムはTOKIの弟に頼み、練習スタジオを予約した。

セッション当日。

池袋駅で落ち合った、そのギタリストは茶髪の長髪で体格も物凄く細く、金属のアクセサリーをジャラジャラ身に着けていて「いかにもミュージシャン」という風貌。

この男がKill=slaydの始まりから終わりまで、ただ一人TOKIと共に過ごしたIZAである。

スタジオに入り「じゃ、演ろうか」というTOKIの問いに対しても、小さくうなずくだけで非常に口数が少ない事に不安を覚えたTOKIとTERUHIKOだったが、セッションをこなして、IZAのギターに、ただただ圧倒された。

今まで、どこか「ミュージシャン然」としてはいなかったTOKIとTERUHIKOは自分達のレベルの低さをIZAによって見せ付けられた。

同時に「この男がメンバーになってくれたら…」という思いが込み上げて、セッションもミスを連発してしまうほどだった。

セッション終了後、IZAの感想と意思を確認すべく、3人は喫茶店に入った。

「で、どうだろう?一緒にバンドをやってくれないかな?」

TERUHIKOが単刀直入に話し掛ける。

それに対し無言のIZA。

TOKIも慌ててフォローに入る。

「とりあえずカバー曲でのセッションだけじゃ決められないのなら、俺達は何回でもスタジオには入れるけど?」

その問いにも無言だったIZAが、意を決したように口を開いた。

「あの、俺は福島からプロになる為に上京してます。二人は、そういうつもりはあるんですよね?」

TOKIは、その問いに対して間髪入れず「もちろん!」と答えた。

「…わかりました。一緒にやりましょう」

TOKIとTERUHIKOは、思わず「おぉ〜」と声が出てしまった。

IZAは続けた。

「お二人とも、正直、音楽に対して今イチ本気度に欠ける部分があると思います。でも、感じるモノがあったんで」

確かに言われてみれば、TOKIもTERUHIKOも実家で暮らしているし、音楽でメシを食う、という感じよりも、ただ音楽を演りたい、という意識の方が勝っていたのかもしれない。

そんな二人の甘い意識をIZAが襟を正してくれた。

「わかった。言われてみれば、そんな風だったかもしれない。でも、やるからには本気でやるから」
「じゃ、頑張りましょう。これからよろしく」
「うん!」

こうしてTOKIの最初のバンドであるKill=slaydの初代メンバーが3人揃った。

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