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第70回

検査の為、入院。

しかしTOKIの頭の中にはバンドの事しか無かった。

以前の絶望しきっていた時とは違う。今はやるべき事がある。

それを待っていてくれる仲間がいる。

それだけで、どんな痛みを伴う治療も乗り越えられた。

ヘッドフォンでIZAの曲を何回も何回もリピートする。

それに対し、何回も何回も歌詞を書き換えていく。

1週間程度の入院も充足した作業に没頭していた事が効を奏して、あっという間に感じた。

退院時に

「先生、また入院する事になったりしますか?」
「え?いや、経過は非常に良好だし、通院先の医院との連絡は取り合っていますから、今回みたいな入院は、もう無いと思います」
「そうですか!」
「ただ、とにかく、無茶はしないように。もし仕事をするならば屋内の軽作業だけにして下さい。体力的に負担が掛かるような仕事は、貴方の寿命を縮める事になりかねませんから」
「はい、わかりました」

医師の言う事はわかる。

ただ、今回の入院でTOKIは再確認した。

生きているという事は、息をしている事じゃない、自分が感じる何かをしている事なんだと。

故にTOKIは自分の衝動にブレーキを掛けようとは露ほども思わなかった。

(行けるところまで行こう)

退院後、TOKIはより一層バンド活動に力を入れる。

数え切れない程のリハーサルを経て、時は1992年2月。

いよいよKill=slaydの初ライヴが決まった。

場所は新宿アンティノックというライヴハウスの昼の部。

自分の可能性と存在の証明の結晶であるKill=slayd。

(今までやってたバンドとは違う。Kill=slaydの初ライヴは絶対に最高のライヴにする)

TOKIは自分の決めたレベルに達するまで、ひたすら練習に練習を重ねる日々を送った。

そして、ライヴ当日。

興奮のあまり寝付けなかったが体調は良い。

しかし、外を見て愕然とした。

道路も建物も覆い尽くすほどの大雪。

「うわっ、何だよコレ!」

思わずTOKIは声を上げた。

しかし、どうなるものでもない。

支度をし、大雪が降る中、会場であるライヴハウスに向かった。

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