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第82回
「もしもし?」
どこか暗い静江の声のトーンに対し「おぉ!久しぶり!」と暗いムードにならないよう明るい声で応えた。
続けて嬉しさのあまりTOKIは矢継ぎ早に話した。
「ちょっと落ち着いた?いや〜何か少し照れ臭いね〜」
明るいTOKIの口調に対し、静江は静かなトーンで
「あのさ、私の実家のアパートが急に取り壊される事になったの。それでさ、急に一人暮らしをしなきゃいけなくなっちゃったの」
静江の実家は古いアパートで、確かに老朽化が進んでいた。
「え?そうなんだ。かなり大変じゃない?」
「うん。それでね。部屋を借りる為のお金とかが必要なんだ」
(俺のマンションで暮らせば良いじゃないか!)
TOKIはノドまで出掛かった。
が、その言葉は飲み込んだ。
言いたいけど、言わない方が良い。
TOKIは静江の声のトーンから、それは感じ取った。
「ねぇ?聞いてる?」
「あ、あぁ!聞いてるよ!」
「でさ、その資金がね…」
「うん!大丈夫だよ!困ってるんでしょ?俺が用意するよ!」
「本当!?助かる〜!出来れば家財道具も揃えなきゃいけないから…」
「全然、大丈夫だよ!」
TOKIは嬉しかった。
静江の喜んでいる声を久しぶりに聞けた事が何より嬉しかった。
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