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第83回

翌日。
静江が希望した金額を銀行で振り込んだ。

(礼の電話が掛かってくるかもしれないな)

TOKIは静江から電話が鳴るかもしれないという思いから携帯電話を手放さずに何日も過ごした。

しかし静江からの電話は一向に鳴らない。

(鳴らないかな?鳴って欲しい)

そんな時、一本の電話が鳴った。

見覚えのない番号。
「ハイ、もしもし?」
「あの〜TOKIさんの携帯ですか?」
「はい、そうですけど?」
「私、わかりますか?」
「え?」
「静江の友達の真由美です」
「あぁ〜真由美ちゃんか!久しぶりだね、どうしたの?」

静江の中学時代からの友人、真由美。

彼女とは静江を通じて何回か会った事がある。

「TOKIさん、静江の事なんですけど」
「え?うん、なに?」
「TOKIさん、別れたんでしょ?」
「ん?いや〜、自分的にはちょっと微妙な感じなんだけどね」
「…」
「あれ?もしもし真由美ちゃん?」
「TOKIさん、もう静江には新しい彼氏がいるんです」
「え?」
「TOKIさん、何日か前に静江にお金を振り込みました?」
「え?あぁ、うん」
「200万円ですか?」
「うん」
「静江に新しい彼氏が出来たのは聞いてたんですけど、新しい職場になってから静江は変わったじゃないですか?私も戸惑ってるけど、今でもたまに街でお茶したりするんです。その時に静江からTOKIさんとは別れて、新しい彼氏が出来たから一緒に住むところ探してるって聞いて、私がお金あるの?って聞いたらTOKIさんから借りるって聞いたんです。それで私がそれはおかしいよ!って言ったら静江が怒っちゃって…」
「…そうなんだ」
「それから静江が「この前はごめんね」っていう電話を掛けて来て、その時にも、お金の事を聞いたら、もう何とかなったって言うから、それはどうしたの?って聞いたら、やっぱりTOKIさんに用意させたって聞いて…」
「…うん」
「金額が金額なんで、私が、それは絶対に返した方が良い!って言ったら、やっぱりまた怒っちゃって…」
「…そうなんだ」
「でも、貸す方も貸す方ですよ!お人好しなのにも程があります!」
「いや、お金は貸したんじゃないよ。あげたんだ」
「同じ事です!」
「うん、そうだね」
「TOKIさんが、そんなだとあの子どんどんダメになっちゃいますよ!大体、自分の元彼女の新しい彼氏との新居費用を出すなんて人がドコにいるんですか!」
「ハハハ、言われてみりゃその通りだね」

TOKIは振り込んだ金が新しい恋人との新居費用とは知らなかったが調子を合わせた。

「とにかく私は返した方が良いって彼女に言いますから」
「あぁ、でも仲良くしてあげてね?」
「今の静江は、ちょっと変なんです。でも私はずっと見守ってますから」
「うん」
「それじゃ、突然電話かけちゃってすいません」
「いやいや、ありがとうね」
電話を切って、TOKIは部屋の天井を仰いだ。

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