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第93回
1999年7月31日。
今日は盟友GLAYのビッグイベント。20万人を動員する「GLAY EXPO'99 SURVIVAL」の日。
TOKIは彼らの記念すべき日に足を運んだ。
名実共に日本のスーパースターとなったGLAYだったが、開演前の楽屋では、出逢った時と何も変わらないTERU、HISASHI、JIRO、そしてTAKUROがいた。
この日発売された公演パンフレットに付属するCD、通称「本読みCD」にGLAYの4人や永井TOSHIと共にTOKIも参加していた為、その話に花が咲いた。
「TOKIさん!あのパンフ完売だって!」TAKUROが言う。
「え?どれくらい売れたの?」
「6万部だってさ!スゲー!」
もう何もかもがケタ違いだった。
幕張を埋め尽くす人、人、人。
それが一度に移動する壮観さ。
更にチケットを買えなかった人の波が会場スペースの脇の道路、高架、あらゆる場所を埋め尽くしていく。
楽屋を後にし、ライヴを観賞。
この世のモノとは思えない程の人気。
そのあまりの凄まじさに言葉が出なかった。
終演後の関係者の雪隠攻めに遭うであろうメンバーを気遣い、TOKIは会場を後にし、明日8月1日に開業予定の自分の会社の最終調整をすべく事務所に向かった。
(アイツらは日本のスーパースターで、俺は明日をも知れないチンケな零細企業、か…)
90年代に活躍した無数のバンドの中で「成功」という二文字を手に出来たバンドは五指に余る。
その成功という一つの太陽の光が生み出す無数のビル群の影に比例するが如く夢半ばで挫折したミュージシャンがいる。
ここ数年のTOKIの言葉を借りれば、職業に貴賎(きせん)は無い。
どんな仕事でも等しく社会には必要であり存在意義があるものだが、この時のTOKIは、そんな言葉が受け容れられる程の余裕は無かった。
親を助けなければいけない状況、そしてKill=slaydの解散時のメンバーの言葉が人間不信とも言える心情をTOKIの中に作り出していた。
(俺はみっともないかもしれないけど、他に選択肢は無い、間違っちゃいない!間違ってない!これしか無いんだ、これしか…)
TOKIは自分に強く言い聞かせながら車を走らせた。
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