2010年6月13日。STEALTHの1st FULL ALBUM「アルストロメリア」の製作が発表された。
そして、そのアルバムの収益の全ては東京都青梅市にある知的障害者施設「友愛学園」児童部に寄付されるという。
今回のスペシャルインタビューは、それに至った経緯とアルバムに込めた気持ちを中心人物であるTOKIに聞いてみた。



------まずは今回のSTEALTH始動のきっかけを教えて下さい。


TOKI:


いや、C4の活動休止が決まって「さぁ、どうしよう?」ってなったんですよ。今までの経験から留意してた事は 「表立った活動が無いのはマズい」って事。やっぱり動き続けなきゃな、っていうのを凄く意識してて。C4を 「サポートギターでも入れて、とりあえず」っていう意識は無かったので、考えられたのは自分のソロくらい だったんです。でも、それじゃ明らかにC4よりパワーダウンするだろうし、苦肉の策ってのが見え見えじゃないですか (笑)でも、どう考えても、それくらいしか思いつかなかったんです。なのでパワーダウンは否めないけど自分的に 意味を持つのであれば、パワーダウンもクソも無いので、ソロをやる自分なりの意味っていうのを模索したんです。 そしたら「そうだ!全部、寄付しちゃうならイイな!」って思い立って(笑)かねてから付き合いのある知的障害者施設 に全部寄付しちまおう!それなら自分的に凄く有意義なプロジェクトになるって感じで。Tomoi君にドラマーとしての 居場所を、Junji君のベーシストとしての居場所も確保できるし、こりゃ一石二鳥だ!みたいな感じでいたんですよ。




------はい、とてもTOKIさんらしい発想ですね。


TOKI:

  

え?どういう意味ですか?




------いつも「誰かの為に」っていう発想がです。


TOKI:


いや、それは総じて自分の為でもありますから(笑)で、C4の活動休止を知ったTAKUROと活動休止に至った経緯 とかの話をしてたんです。そんでヤツが「活動休止した後、どうすんの?」って聞いてきて「ソロをやって、売り上げ の全部を施設に寄付しようと思ってんだ」って言ったら、「何それ?TOKIさん一人にそんな事させて、俺に指くわえて 黙って見てろとでも言うの?俺に曲を書かせて下さいよ!STEALTHでやりましょうよ!」みたいに言われて。アイツとは もうお互い人生の半分くらいの付き合いですから(笑)私が中心となってソロをやって、その売り上げを全部寄付するっ ていう事が、私自身にどういう負担が掛かるか全部お見通しなんですよ(笑)それを見かねて言ってくれたんでしょうね。




------もう言葉になりませんね・・・


TOKI:


いや、でも、そんなTAKUROの気持ちは凄く嬉しかったけど、となると正直、私の望む形。つまり何とか基金の何とか プロジェクトみたいな大仰な事じゃなく、「この手から、直接その手に」っていう事が出来なくなってしまいそうで、 ちょっと恐かったんです。だって「街外れの小さな施設に売り上げを直接この手で渡す」っていうだけなのに、諸々の 権利問題とか色々な見知らぬオッサンがしゃしゃり出てきそうで(笑)その事をTAKUROに言ったら「俺が全部、交通整理 をする。TOKIさんは安心してドーンと構えてて下さい」なんて言うもんだから・・・まぁ、もう、っていうか泣かせる ヤツでしょ?




------LOVER SOUL FOUNDATIONでの活動でも有名ですけど、素晴らしい方ですよね。


TOKI:


そうそう。今回、私とTAKUROが共通して思っていたのは「直接、この手で」っていう事なんです。私は、そこの畑 (ハタ)っていう職員の方と、もう4年くらいの付き合いになるんですけど、最前線のリアルな窮状っていうのを当時 から聞いてて、物資の支援は以前から私の会社(Conquest Group)から恒常的に続けてきたんだけれども、何回か友愛学園 に直接足を運んだ時に、まぁ、ベッドとかが、かなり古いのとかが気になってたのね。で、ソロを思いついた時に 「これでベッドを変えてあげられるかな」とか思ったんですけど、児童部の子供達35人のベッドを全部差し替えると なるとシングルなら最低3000枚以上売り上げないと変えてあげられないんです。




------え?そんなに費用が掛かるものなんですか?


TOKI:


いや、通販とかの安いベッドじゃ持たないんですよ。彼らはエネルギーに満ち溢れてるから(苦笑)そういった現場 を知ってる方なら分かると思うんですけど、耐久性がかなり無いと1週間も持たないんじゃないかな?1つのベッドが 5万円としても「×35」になると輸送費も含めると200万円くらいは掛かりますからね。




------そうなんですか・・・


TOKI:


ベッド1つで、これだけの費用が掛かる。たかだか35人の子供達の老朽化したベッドを取り替えるだけで、これだけ の金額が掛かる。国が知的障害者の子供一人に支給している予算枠ってのはね、例えば衣類は年に2万円、風呂は週に 2回、居室に関しては3.3u、とかなんです。私は常に、彼らは罪を犯した訳でも何でもない。生まれながらにして、 そうだったんだ。そんな彼らに、まぁ、もちっとマシな環境でもイイんじゃないか?っていう、それの手助けをさせて くんないか?ってだけなんですけどね。




------以前からTOKIさんは、そういった福祉に対して積極的に取り組んでいたのは存じてましたけど、具体的な 数字とかを聞いてしまうと、いかに大変か分かります。


TOKI:


いや、大事な事なんですけど、彼らにもプライドはあるんで、私は「可愛そう」という視線で彼らと接した事はあり ません。私と等しく同じ人間である訳だから。私自身も障害者だから多少なりとも分かるけど、そういう視線で見られる のは嫌なモンなんです。ただ、そういう事が出来る人間がいて、そうしてくれると助かるわ〜っていう人間がいるだけ の関係です。「醤油が切れちゃった。お〜い醤油貸してくれや」みたいなモンです(笑)貸しでも借りでも何でもないし 、それ以上でも以下でもない。




------はい。勉強になります。


TOKI:


いや、勉強って言うか(笑)話を戻しますけどイイですか?




------はい!お願いします(笑)


TOKI:


(笑)シングルで最低3000枚以上でもベッド一つ。という現状で、まぁ、こんなCD不況だからね。私のソロで、まぁ、 何とか・・・っていうレベルだったんですけど、STEALTHなら「おぉ!ベッドはイケるだろ!」っていう感じだったん ですけど、TAKUROが「いっそアルバム作っちゃおうぜ!」みたいな事を言い出して、それから2週間くらいだったかな? 30曲以上も用意してやがってね(笑)そこから選曲してフルアルバムと言える予備の分も含めた収録曲数をピックアップ して、私も即時、作詩作業に入ったという感じです。




------ファンとしたらフルアルバムは嬉しい限りです。


TOKI:


それが分かっていたから頑張ってるんです!(笑)徐々にじゃなくて、一気に!ですから、同じような歌詩になっ ちゃう恐れがあったんですけど、楽曲の幅広さが普通じゃないんで、同じような歌詩が載り様が無い!(笑)そして、 C4にはない、C4では書けないような領域まで書いちゃおうと思ってます。私の歌詩は説明要らずで読めるのを心掛けて いますが、今回のSTEALTHのは「C4があって」っていう前提で書きますから、もう賛否両論を本当に恐れないで思い切っ たのを書いてみたいと思ってます。




------アルバムタイトルの「アルストロメリア」っていうのは、どういう風に決まったんですか?


TOKI:


「アルストロメリア」っていうのは百合水仙の事で、まぁ、さっきも話しましたけど、金額の面だと世知辛い話に なっちゃうじゃないですか?なので、買って下さる方々の気持ちを花束に例えたかったんです。アルバムを花束に代え て「君達に、私達から直接、届けます」っていう感じでね。アルストロメリアっていうタイトルは私がつけたんです けど、TAKUROも、タイトルに込めた意味を説明したら賛同してくれてね。まぁ、ちょっと照れくさいっスね(笑)




------調べたんですけど、アルストロメリアの花言葉は「凛々しさ」「やわらかな気配り」なんです。 今回のお二人の気持ちにピッタリだなと。


TOKI:


まぁ、花言葉っていうガラじゃないですけどね(笑)あ!ここで一つ、言いたい事があるんです。




------何でしょう?


TOKI:


出来れば・・・なんですけど、このアルバムは皆さんが「何かを我慢したお金」で買って欲しいと思ってるんです。




------それは何故でしょう?


TOKI:


さっきの話に通じる事なんですけど、知的に問題がある子達だけど、妙に憐れみみたいな感情で見ないであげて欲し いんです。お金って云うモノは皆さんが働いたお金で、すべからく貴重なモノなんですけど、それは分かった上で言いた いのは「余裕のある金額」ではなくて「気持ち」であって欲しいんです。分かりやすく言うと、例えば目の前にハンバ ーグステーキがあって、それを食べました。腹一杯になったんだけど、付け合せのホウレンソウやらポテトが余った。 それを腹を空かした子にあげる、っていうのじゃなくて、ハンバーグを半分食べた。まだ食べたいんだけど、隣りの子 が腹を空かしているみたいだから、半分あげる、みたいな感じでいて欲しいんですね。




------なるほど。


TOKI:


ホラ、お金の話になっちゃうと世知辛いからさ(笑)そういった気持ちがあったら嬉しいなっていう話です。




------アルバムを買ってくれた皆さんの気持ちを花束にしてTOKIさんとTAKUROさんが届けてくれる、という事ですね?


TOKI:


みなさんはフルアルバムを買って、更に友愛学園の子供達の生活の向上にも貢献できる。子供達は嬉しい。私と TAKUROは、そんな素晴らしい事の核を担えて、更にイイ汗もかける(笑)全員嬉しいじゃないか!っていうところです (笑)
あと、これも付け加えておきたいんですが、今回のSTEALTHのプロジェクトには、私やTAKUROの他に、本当に 沢山の方々が携わってくれる事になっています。情報解禁となって、まだまだ増えるでしょうけれど、早速、参加を表 明して下さったのはイラストレーターの菅原芳人さん。この方がジャケットを手掛けて下さっており、あと [-black:shaft-]のパンフレットや[-Pylebanker-]、[-Crocodile Vibration-]とかを手掛けて下さったデザイナーの 讃岐ケイコさん、更には今回のSTEALTHプロジェクトの発足を記念してTOKI魂が宿りまくりのシルバーアクセを制作して 下さるアミーゴ野池さん。このシルバーアクセの利益も全て友愛学園の子供達に寄付されます。FOOL`S MATEの加納一美 さんにも状況を説明したら「私に出来る事があったら何でも言ってね」と仰って頂きました。ありがたいですよね。 音楽面では意外な男から身近な男まで、まぁ、まだ内緒にしておきます(笑)状況が進展するにつれ、時系列に沿って 明かしていきます。




------「アルストロメリア」の発売はいつ頃を予定されていますか?


TOKI:


今、もう6月ですよね?う〜ん、夏には発売できるように頑張ります!




------ライブの方の予定はあるんですか?


TOKI:


TAKUROは「やろうぜ!」って言ってましたが、アイツは大規模なツアーがある筈です(笑)まぁ、やるとしたら各々 のスケジュールの間隙を縫った形でしょうね。[-black:shaft-]の時みたいに(笑)




------楽しみですね!


TOKI:


まぁ、もう自分としてはC4を応援してくれている方々に偉そうな事を言ってましたからね。「どんな事でもプラスに 捉えるんだ!」とか(笑)なので、今回の活動休止をプラスに捉えられる只一つの選択、それが今回のSTEALTHだったと 確信しています。




------以前、情報解禁前にブログでキーワードを出されていましたよね?


TOKI:


あぁ「現実を踏まえた上で、最上と思われる方法、そして、それは自分の未来と融合させたモノで、5月23日を迎え なければ出来なかった事」ね。そうですね、まず「現実を踏まえた上で」っていうのは、ギターがいないから動けない C4の事を指してます。あ、C4では「俺が全てを塗り替えてみせる!」ってくらいのギター募集してます。口だけじゃな いヤツね!(笑)あ、すいません、続きね。それを踏まえて最上の方法、それがSTEALTHであるのは、さっき言いました ね。「未来と融合」ってのは、私は再三言っていますが、将来は養護施設の経営をしたいんです。自分の夢である「福 祉」と今現在の自分の運命である「音楽」それを融合させたっていう意味です。そして、それはC4と平行でやれるモノ じゃないので、活動休止中じゃなければ、とても出来ない。故に「5月23日を迎えなければ出来ない」という事です。




------なるほど!謎めいてた事が氷解しました。


TOKI:


それは良かったです(笑)ミュージシャンにとってフルアルバムってのは、一番労力が掛かって、一番の財源となる モノじゃないですか?それを全部寄付するというから「クレイジーな事」って表現したんです(笑)ライヴとかシングル とかなら聞いた事ありますけど、単独アーティストのフルアルバムを寄付っていうのは、まず聞いた事がないですから ね(笑)




------すごく勇気のいる事だと思います。「アルストロメリア」に込めた思いなどはありますか?


TOKI:


対象の規模が大きいと、大きい事は素晴らしいけど現実感が乏しくなったりするじゃないですか?私はC4でも体現 していますけど、超現実の厳しさを誤魔化さずに、逃げ出さずに生きたいんです。「愛に満ち溢れた平和な世界になり ますように〜♪」なんて、ただ歌うだけなら誰にでも出来る。まぁ、そういう純粋な気持ちは尊いとは思うけれど、現 実的ではないし、実践的でもない。私は親の愛に逸(はぐ)れた子供達の老朽化したベッドを、部屋の内装を、服を、 いわゆる人並みな領域までにする事でさえ、こんなに大変なんだ、というところから闘っていきたい。それも出来ない ヤツが平和だ何だ言っても説得力が無いと思うんですね。如何に自分は非力なのか?まず、そこから目を背けない。そ れを震えながらでも直視してこそ、明日が拓けるんだと思っています。




------最後にファンの方々に一言お願いします。


TOKI:


今回のSTEALTHはボランティアという性質上、無駄な宣伝費を一切掛けれません。なので、皆さんの口コミがメイン となります。より多くの方々に宣伝してくれると嬉しいです。無論、私もTAKUROも、そして参加してくれるアーティス ト軍団も最大限の努力をします。なるべく大きな花束になるように御協力下されば嬉しいです。